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御嶽山


今回は登山専門の旅行社主催の雪山講習のツアーに参加。
男性8名、女性7名、ガイド2名、ほとんど中高年でボクがちょうど平均年齢くらい。
雪山は初めてという人が数人いてそのうちの1人の女性は今回の雪山のための装備に20数万円かけたとか。
女性参加者が持つピッケルはほとんどが初めて使うらしく新品だった。
ツアーは夜行(前泊)日帰りでごく普通の登山のはずだった。
12月14日(金)夜8時に名古屋駅をバスで出発、12時前に御嶽休暇村に着きそのまま仮眠、
15日(土)朝おんたけスキー場にゴンドラの動く8時前に集合、ゴンドラ駅の開くのを待った。
なかなか開かず8時30分になってやっと開いた。理由を聞くと平日と勘違いしていたらしい。
ここで30分ロスした。
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ゴンドラの山頂駅を降り、田ノ原の鳥居をくぐって樹林帯を歩き始めたがそこは膝までの積雪。
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最初は二人のガイドが交替でラッセル、その後参加者が交替で5分づつラッセル体験をする。
ただほとんどの参加者が初めてだったので思うように進まない。8合目手前からは雪はそんなに深くなかったがアイスバーン気味になっていて3回くらいけり込んでやっと前に進めた。
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8合目を少し越えたあたりでアイゼン装着の指示がでたが、かじかんだ手袋を付けた手では思うように装着できない。自分のをやっと付けて他の人を手伝ったりしてそうとう時間をロスした。
9合目で山頂はあきらめ下山することにした。ここで滑落停止の練習をしたが実際はガイドがお手本を見せる程度にとどまった。
このときの気温が-8℃。眉毛が凍り始めた。じっとしていると足元も冷たくなってくる。
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1時40分下山開始。しかし振り返ると雪と風のために踏み跡は消えていた。ホワイトアウトのためなんにも見えない。
そのためかそれともゴンドラの最終の4時までにおりようと焦ってショートカットしたのかガイドは上がってきた元のコースを外した。ボクもコンパスで確認はしていたが方向は間違っていなかったし雪の上ならどこでも歩けるので適当なところで軌道修正できるだろうと安易に考えていた。
ガスが少しきれて上りの時に通った8合目の避難小屋が200メーターくらい北に見えた。そしてそのまま樹林帯に入ってしまった。
樹林帯の中も雪が積もって一見歩きやすそうだったがいざ歩いてみると笹の上に雪が積もっているので体重を掛けると踏み抜いてしまいとても歩きにくかった。
それでも無理して強引に下り視界が開ける所に出た。ゴンドラの山頂駅が見えたがあまりにも遠い。
さすがにボクもビバークを考えた。ツェルトは持っていたが余分な防寒具は持っていなかった
ので不安になった。
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5時近くになっていて暗くなってきたのでライトを付ける。携帯がやっと使えるようになったのでガイドが警察に連絡していた。
結局藪こぎをして正規の登山道に出てゴンドラの駅に戻れたのは午後7時。
駅は本来なら係員も下りて誰もいないはずなのに照明が明々していた。警官の姿も見えた。

駅に着いてみんながほっとしたところでガイドが現在の状況を話し始めた。
警察に電話して捜索を依頼したこと。そこでゴンドラの事故のこと。ゴンドラ事故で消防、警察は手一杯なので何とか独力で下りてくれと言われたこと。
そういうことでゴンドラは使えないので少し休憩をしたらスキーのゲレンデを歩いて下りるということなどを説明した。
だが疲労で弱り切っている参加者を見てガイドは警官に何か相談に行った。
警官は携帯でどこかと話していたがそのうち我々の前にやってきて
現在ゴンドラ事故で救助者搬送のためにゲレンデの圧雪車が3台来ていてそのうちの2台をこちらに回してもらえるらしくその車でピストン搬送してもらえることになった。
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8時近くになってその車はやってきた。大型のブルドーザーの前後におおきな板のような物が着いているような感じ。
助手席は定員1名だがそこに男性は3名、女性なら無理矢理4名乗れる。
この車2台で3往復すれば全員が降りられる。最初に女性全員下りてもらった。
ボクは2回目に乗せてもらった。助手席に無理矢理2名座ってその前にほとんど中腰で1名乗った。
車は全速力で雪のゲレンデを下り始めた。その時は雪も大降りでワイパーを使ってもほとんど見えない。僕らには返ってその方が恐怖心が出なくて良かったのかも。
先に乗った女性達はそうとう大きな悲鳴を上げていたらしい。ゲレンデの段の所ではキャタピラがジャンプするように感じがした。
でも急勾配ではあるけどゲレンデは単調。そのうち余裕ができてきて車内を見回した。なんか違う。ブルや作業機械は何度か見たが明らかに違う。
そこでボクは運転手に聞いてみた。「この車、メーカー何処?」
「いま何かとお騒がせのカナダのボンバルディア社です。」若者の運転手は答えた。
なるほど、ボクは妙に納得できた。
ボンバルディア社は今ではプロペラ飛行機が有名だけど元々はスノーモービルの会社。雪に対するキャタピラのノウハウはあるだろうから。
そして車内の運転席は左側。助手席とは完全に分離されメーターや計器類は少ないがフロントガラスの上に無線が着いていたり飛行機のコクピットをイメージしている。日本製とはまるっきり違う。ひとことで表現するならかっこいい。
ボクにとっては一生に一度の体験。この車に乗ることもましてゲレンデを走ることも二度とないだろう。乗っている三人でそんな事を話しながらドライブを楽しんだ。
そのうち暗闇の下の方に赤い点滅が沢山見えてきた。救急車やパトカーの回転灯だ。
「覚悟してたほうがいいよ」運転手は真面目な顔で言った。
車が止まってドアを開けた瞬間、カメラのフラッシュの光と沢山の報道陣。恥ずかしくてまともにみれず逃げ出したかった。
消防のレスキュー隊が来てザックも持ってくれて建物に案内してもらい中ではたぶんボランティアと思われる若い女性が何人か毛布を持ってきてくれた。
そりゃ下で待っている人にしたら搬送車から降りてきたら誰だって救助者と思うよね。
最初に下りた女性達にはインタビューのマイクも向けられたそうだがさすがに僕らにはそこまではなかった。
恥ずかしかったけどめったにできない体験。
そして最後のメンバーを搬送するために車が上がっていったが・・・・。

本来なら8時から搬送が始まって一往復30分×3回で9時30分にはみんな下りてくるはずだった。
ところが僕らをおろして上がり始めたときゴンドラから救出者が下り始めたらしく搬送車は救出現場に向かったらしい。
結局最後のメンバーがバスに戻ったのは10時30分頃。
みんなへとへとでバスの中でも話もせず眠ってしまった。バスが名古屋に近づくとこの時間では電車もなく、名古屋駅の近くからの参加者は回り道をして自宅近くに直接降ろした。
名古屋に着いたのは午前3時。ボクを含めて約半数の参加者は帰ることができずホテルをとってもらった。


今回は三千㍍級の雪山の感触-8℃の寒さ(写真を撮ろうと手袋を外したら手が凍る、そのため今回はあまり写真が撮れなかった。ボクはカメラと一緒にカイロも入れていたので性能的には問題なかったが他の人はバッテリーの能力が落ち1枚も撮れなかった人もいた。顔はスキンクリームを塗っていたが引きつる、眉毛が凍る)、ホワイトアウト時間オーバーでライトを使う怖さ(夜はライトを付けてもペースが遅くなる)、ゴンドラの事故があったおかげで圧雪車乗車体験など貴重な経験ができた。


だけど・・・疲れた。


後日、ツアー会社から迷惑を掛けましたとの謝罪とツアー料金の中から5千円の返金がありました。もちろんホテル料金もツアー会社持ちでした。
by inoshikatanuki | 2007-12-18 21:54 |


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